今年も終わるので、毎年恒例の読書感想文を残しておきたいと思います。例によって年内に書き終わらなきゃと急いで書いた自己満足の雑な文章なので感想文はどれも浅いです。ご了承ください。

毎年恒例とは言っても去年は書き忘れていました…。前回は2022年です。

今年読んだ本のまとめ 2022 | 為せばnull

UNIX という考え方

  • Mike Gancarz 著
  • 荒尾 桂 監訳
  • Amazon

UNIX の設計思想について知りたかったので買いました。

原作本が1996年出版、日本語訳版が2001年出版ということで、流石に内容には古さを感じざるを得ません。しかしながら UNIX が登場した背景を通して、普遍的な設計思想や考え方について非常に参考になりました。

システムの普遍的な進化の過程や、「小さいものは美しい」という UNIX 哲学の重要性とそれをどう活かすべきか、小さいプログラムを組み合わせることによって大きな仕事をなすテコの原理を例とした説明(マルチ商法が良い例として示されていたのは若干時代の違いを感じましたが…)などなど、エンジニアリングにおいて為になるヒントが多い印象を受けました。

なぜ働いていると本が読めなくなるのか

Twitter に影響されて買ってしまいました。

「本を読めるようになるコツ」みたいな実用書的なものでは全く無く、忙しい現代人が本を読まなくなった原因を読書や文化、労働などについての近代史を紐解いて論じていて、内容としては論説文に該当するかと思います。

本を読めない理由の核心に迫ると、うんうん、たしかにそうだよねと(まだ働いていないにも関わらず)納得しました。

個人的に思わぬところでハッとさせられたのは「知識」と「情報」の違いについての点です。大学院で論文を書いていると背景知識から論じなければならないのですが、これは普段の SNS やブログ記事など「情報」が中心の文章を書くにはノイズになってしまいます。自分の文章が分かりづらく冗長で無駄に長くなってしまうのはこの区別ができていなかったのでは?と思い反省しました。

最後はなぜかうまくいくイタリア人

結構前に誰かにおすすめされた気がして、本屋で見かけたので買いました。

基本的には著者様の体験を通したエッセイなのですが、日本人とイタリア人との間で物事を遂行する上での考え方が真逆である点が面白かったです。イタリアに行く機会は自分には無いと思ますが、「こういう考え方もあるんだな」という一つの人生観としての知見が得られました。

経済評論家の父から息子への手紙

金銭のこと、生活のこと、投資者・経営者・労働者間の関係、資本主義社会の構造や人生観など、今後の自分の教科書になり得る内容でした。全体的に語りかけるような文章ですので非常に読みやすかったです。

特に投資のことについては、さすが経済評論家の方ということもあり、かなり詳細に書かれており、今後是非参考にしたい内容です。これから大学に進学する息子に向けた手紙が題材ではありますが、何歳からでも参考にできる内容だと思います。

自作OSで学ぶマイクロカーネルの設計と実装

去年発売された新しい OS の本です。それも、これまでの OS 本は大抵モノリシックカーネルだったのに対し、こちらの本はマイクロカーネル。自身の研究分野のこともあり、ちょうどマイクロカーネルについて学びたいと思っていたので嬉しい限りです。

基本的には「HinaOS」という、この本のために作られた教材用のマイクロカーネルの実装を見ながら、マイクロカーネルの設計を追っていく形になっています。「ゼロからのOS自作入門」(いわゆる「みかん本」)のようなステップを踏んで OS を自作していくような内容ではなく、完成品をもとにソースコードを見ていく形になります。ですので自作本というよりかは教科書寄りかと思います。

HinaOS だけでなく、MINIX3、seL4、Mach などの有名なマイクロカーネルでの実装も見られるのもこの本の嬉しい点。 マイクロカーネルの設計には一通りの正解があるわけではないので、それぞれのカーネルが微妙に設計が異なる点(例えばメッセージパッシング)が面白かったです。いつかマイクロカーネルも一から自作してみたいですね。

Binary Hacks Rebooted —低レイヤの世界を探検するテクニック89

  • 河田 旺、小池 悠生、渡邉 慶一、佐伯 学哉、荒田 実樹 著
  • 鈴木 創、中村 孝史、竹腰 開、光成 滋生、hikalium、浜地 慎一郎 寄稿
  • Amazon

発売された時期にちょうど気になっていたところ、知人にこの本を貸していただけたので読みました。

まだ2章くらいまでしか読めていませんが、バイナリや ELF の観点からコンピュータの動作を探っていったり、スタック操作のしくみを利用したアセンブリでよりバイナリをより軽量化したりと、新たな視点と知らなかったハック的なテクニックが満載でした。

ボッコちゃん

700円くらいで買える文庫本です。初版刊行はなんと1971年。

小学生の頃は星新一の作品が大好きで、図書館に行く度に星新一の本を必ず借りていたほどです。懐かしくなったので買いました。

星新一の作品は最後にハッとさせられたり、予想外のオチが待っていたり、意味が分かると怖いオチだったり、逆に知らず知らずのうちにオチへのフラグが立っていったりと、一度読んだ後にもう一度読み返したくなる、何度でも味のする面白い作品ばかりです。こちらの本も例に漏れずそうでした。

国境のエミーリャ

こちらは漫画で、日本が東西陣営によって分割され「日本民主共和国」と「日本国」に分断された世界線での「日本民主共和国」側でのお話です。

主人公エミーリャは表向きは東トウキョウにおける食堂の給仕係で、裏では脱出の請負人を生業とします。そのエミーリャが脱走を手伝う話や内戦勃発を阻止する話など、いずれもスリル満点です。

今読んでいる本

  • Binary Hacks Rebooted(引き続き)
  • 作って学ぶブラウザのしくみ(土井 麻未 著)

おわりに

今年は技術書ばかりでなく、色々な分野だったり、思想や経済、人生観に触れられる本が多かったと思います。来年からは私は学生ではなく「働いている人」になりますので、「働いていても本が読める人」になりたいです。